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空き家問題

1.相続不動産が空き家となる時代?

引き継いだ不動産が空き家となる例が増えている。放置空き家に逆風の法律改正も。

ここ数年、付き合いのある遺品整理事業者や葬祭事業者から「相続で引き継がれた実家がそのまま空き家になる割合が高まっている」という話をよく聞くようになりました。

離れて住む老親が亡くなる→葬儀→実家不動産を相続→しかしながら、その家にはもう誰も住まない = 空き家化という展開です。

他方で、放置空き家の問題を重く見た国が、そのような空き家の家主に厳しい法律改正に踏み切ったという話も入ってきます。

「利用する予定のない実家不動産を相続したご遺族は、どのように考え行動するのが適切か?損をしたり困った事態にならずに済むにはどうしたらいいのか?」という切り口で、不動産業界の中でも空き家問題に特に詳しい元「住宅流通促進協議会」事務局長の三好琢氏にお話をうかがいました。

今回のインタビュー先 三好琢氏について

元参議院議員秘書。議員の大臣就任により国土交通大臣秘書官を務める。退職後、政策コンサルタントとして独立し、2012年「九州住宅流通促進協議会」(後の「住宅流通促進協議会」)の発足にともない運営を支援。本協議会は国交省から空き家対策事業者として事業採択を受け、空き家管理に関するガイドライン等を作成。本ガイドラインは空き家管理で広く活用されている。 現在は、住宅・不動産分野に限らず対行政・対政治に強いコンサルタントとして、行政と連携して事業を進める民間企業のサポートを広く行っている。 現職は、(株)トライミライ 取締役

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図1 出典:「平成25年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)

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「国が定める空き家には賃貸物件で貸すための空き家も含まれています。この賃貸用が空き家数の50%以上を占め、売却用の物件も空き家にカウントされ、これが4%くらいです。別荘も空き家に区分されています。一方で用途が定まっていない空き家を国は『その他空き家』と呼んでいます。別荘は問題ではないし、賃貸用や売却用の空き家も特に問題じゃないです。国が問題にしているのは『その他空き家』なのです」。(前出の三好氏)

そしてこの「その他空き家」が増えています。2003年と2013年を比較してもほぼ1.5倍になっており今後も増え続けると考えられています。

「遠いところに住む実家の両親が亡くなりました。どうしますか?という問題です。今の生活がある中で『勿体ないから私たちが住もう!』とはならないですよね。そういうケースが増えています」。

高齢者の子供や親族は、たいてい離れた土地で住環境を整え既にそこに根付いています。今さら実家が空いたからといってそこに移り住む理由はなくなっていることが多いでしょう。
また、以前は団塊の世代が都会に出て行ってしまった後の、田舎の実家に住んでいた親世代が亡くなることで空き家が発生するパターンがほとんどでしたが、昨今はその団塊の世代がマイホームとして入手した郊外の物件が空き家化する流れも強くなっています。(図4)

図4
図4

そして、この「その他空き家」318万戸は、市場流通性のある不動産とそうではない不動産に大きく分けられます。
空き家そのもの、すなわち建物そのものがそのまままたは多少のリフォームや修繕で売却または賃貸可能性ある物件は、耐震性・腐朽や破損の程度・最寄り鉄道駅からの距離といった取引上重視されがちな要素から概算して約48万戸(図5)。建物は市場に乗らないが解体し更地にして土地を市場に乗せる余地がある物件と合わせると概算で80万戸前後と推察されます。つまり「その他空き家」318万戸の内3/4はそもそも市場にも乗らない不動産、つまり昨今「負動産」とも呼ばれる土地建物なのである。そして残る1/4が本来は有効活用の余地があるにもかかわらずなんらかの事情で市場にも乗らずそのまま埋もれている不動産であると想定されます。

図5
図5

ご遺族が相続された空き家が市場流通性のある不動産なのかそうではない不動産なのか。このいずれであるかによってご遺族がやるべきことは大きく異なります。そのため、三好氏にこれらを分けて解説いただきました。

2.売れない空き家について その問題点など

「使わない、売れない空き家を所有しても経済的にはマイナスしかありません。不動産を所持していることで発生する費用を払い続けるだけです。不動産は国や自治体に寄付しようとしても受けてもらえませんので一度所有してしまうと救済策もありません」。
「売れない不動産のコストの一つは固定資産税です(場所によっては都市計画税も)。あとは管理費用。ちなみに管理費用は空き家管理業者に依頼すると月1万円ぐらいが一般的ですから年間で12万円の費用が掛かります。更地にする場合は解体費用が床面積に対して坪当たり3万円程度掛かりますので一般のお宅でも解体に100万円くらいは必要です」。

そういう不動産を相続することになってしまったらどうしたらいいのでしょうか。

「それこそ不動産屋に駆け込んで『0円でもいいから売ってくれ』です。不動産を保有することは制度上それぐらい負担がかかることなのです」
「相続放棄となると一切合切です。だから、なかなかそこまで覚悟は決まらない。それでなんとなく相続することになる」。

つまり、最初の分かれ目は「相続放棄するかどうか」なのでした。これまでは「負債というマイナス財産とプラスの財産を比較して相続放棄の判断を下す」というのが一般的でしたが、一見プラスの財産に見える土地建物が本当にプラスなのか?マイナス財産ではないのか?といった注意が必要になるのです。
そして、相続した場合には一軒家であれば次の分かれ目がやってきます。「空き家のまま保持するのか、それとも建物を取り壊し更地にした上で保持するのか」です。

三好氏が上で触れた固定資産税や都市計画税の税額算出で使われる土地の評価額については、「小規模宅地等の特例」という課税軽減措置(最大に軽減される場合、評価額が1/6で計算される)があります。これにより、使うめどのない実家を保持する場合に廃屋のような状態であっても、そのまま更地にせずに建物を空き家のまま放置するといったことが広く行われてきました。
が、このような空き家の放置が、環境面や犯罪、土地の景観といった地域に与える影響を重視し、国は2015年に「空き家対策特別処置法」を制定しています。(図6)
これにより、きちんと管理されずに倒壊寸前となったような空き家は「特定空き家」としてその所有者にペナルティが課せられるようになりました。これは先の税の軽減処置が適用されなくなることに始まり、それでも指導に応じない場合には最終的に行政が家を取り壊し、土地を競売にかけることでその解体費用を回収するところまで展開します。
この立法により、もし空き家のままとするのであればある程度しっかりとした管理やメンテナンスの負担から逃れることはできなくなったと言われています。

図6
図6 出典:2014年12月26日(金)付け 公明新聞

3.売れる土地建物であった場合について

では逆に、「ご遺族が自分たちでは活用しない物件なのだけれども本来は売ったり貸したりできる物件である。けれども、なんらかの事情でうまくそこを流通に乗せていけない」といった場合に、そのような不動産の相続人となったご遺族はどう動くのが適切か?三好氏にそのあたりの事情を聞いてみました。

「市場価値がある物件なのに売り出せない、貸し出せないという事が起こるのは、相続先が決まらない場合です。権利が確定しないから物件を活用できないのです。でも、権利が確定したら仮に家が廃屋になっていても売れます。ただ、そうなった場合には更地にしたり、解体費用分を値引くのが一般的です」。

「土地の市場価値さえあればどうにかなる」というのが、現場の感覚のようでした。

また昨今は、介護施設側でも看取りまで暮らせる施設(終の棲家)を目指して体制を整えているところが増えています。しかし、入居する側では「入所によって自宅が空き家となり、もはやこの先使うことはない」と分かっていても「処分の覚悟が決まらないままにそのまま…」といった事情があるようです。

「『家で死にたいですか、施設で死にたいですか』と言われて、『施設です』とはなかなか答えられないでしょう。結果的には介護施設で亡くなるかも知れませんがそういう合理的な判断をする事はなかなか難しいでしょうね」。
「ある日倒れたのがきっかけで入院して、そのままとある施設に入ることになった…といった場合ですと、当然『元気になったら家に帰りたい』と考えます。これはもう個人のアイデンティティの問題だと思います」。

施設入所で空き家となった、亡くなって相続したけれど誰も住む身内はいないから空き家のままになっている…。いずれにしろ空き家になって長い時間が経過することで、本来はそれなりの額で売れたはずの空き家の不動産価値が大きく棄損してしまうようなことはあるのでしょうか?

「もちろんご自宅はある程度傷みはするでしょう。しかし、それが理由で不動産価値が大きく下がることはないと思います。家に残った家財の整理さえ解決すればその不動産は市場で流通します。それで家財処理といった領域つまり遺品整理業者さんに入ってもらうことで、スムーズに不動産市場の流通に乗せることができたといった展開が多くなっています」。
「実は、家財の処分を子供が自分たちだけで行うのは結構大変です。これは処分していいのか悪いのか。子供たちにとってもかつてはそこに長く住んでいた家だったりしますから、感情的な事情もあって簡単には進まない…ということはあると思います」。

思い出や長く暮らしてきた家に対する想い…といった情緒的な要因が、市場流通性のある不動産を「その他空き家」のままにしているということは言えそうです。とはいえ、それによって必ずしも大きな損失が生じるわけでもない、という実情が見えてきました。

「逆に合理的に決めやすい状況では処分に進みやすいです。例えば、ご両親共に亡くなって自分たちも住まない物件がある。『分けにくい不動産のままだと相続で揉めやすくて嫌だから、その家も土地も売ってしまって現金にして、人数分でちゃんと全部割ってしまえる状況をつくりたい』と遺族が落ち着いて話し合っているという場合であれば、不動産流通につながりやすいケースだと思います」。

関係者が理性的に話し合って合理的な判断が下せることが、全体にとってメリットが大きくなるのは当然です。そのためには、やはり親族間で率直に話すことができる信頼関係が前提となっているようです

4.本人が生前整理しておくことのメリットは?

最近は「終活の一環として不動産も生前整理しておくべき」という言説も高まっています。
「高額の相続税が課せられたが、現預金があまりない」となると、遺族が急いで売らなければならないという展開になることも。ある程度その不動産を使わなくなった生前の段階で、使うなり・売るなり・貸すなり・更地にするなり…といったことを、しっかりと時間をかけて検討しきちんと準備しておくというやり方もあるでしょう。
なにも準備をしなかった場合と生前整理をしっかりと行っておいた場合とで、本人と家族を全体として見た場合のメリットとデメリットは、大きく違いが出るものでしょうか?

「ご自宅の処分が避けられないのであれば、生前整理として行っていくに越したことはありません。何も決めずに亡くなった場合、残された遺族はどの様な結論を出そうともそれに反対する感情的な意見はたいてい出てくるものです。ですが、お父さんであれお母さんであれ、一家の意思決定権者が先に意思決定をしておけば残される者は揉める必要がなくなります。それこそ『お父さんが言っているから、それでいいのよ』とか、『お母さんが言っているから仕方がないじゃん』というような状況を、本人が亡くなる前に作っておくことはすごく大切だと思います。遺言と一緒です」。

「ちなみに急いで売ると不動産業者から足元を見られて買い叩かれます。でも納税の〆切まで10ヵ月間あります。市場価値のある物件であれば2~3カ月で売れる事が多いのでそこまで急ぐ必要はありません」。(図7)


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図7 相続手続きの流れ

「現実的な準備としては、生前に不動産業者に住宅の市場価値を確認することです。もし資産性があるならば大きな問題ありません。しかし、資産価値が付かない『負動産』だと判明した時は大変です」。

「相続放棄を選択肢に入れるとなると3ヵ月間しかありません。御身内が亡くなりました、通夜だ、葬儀だ、四十九日だ、と心身ともに落ち着かない時に自宅の市場価値を確認しましょうと言うのはなかなか難しいと思います。そうして心身ともに一段落するのを待っていたら3ヵ月間はあっという間です。結果としてそのまま負動産を抱えてしまうことになりかねません」。

「負動産」を抱えてしまった場合、法律や制度が改正されるまで毎年赤字を垂れ流す状態から脱することができないという困った立場に置かれてしまいかねません。しかし、それを避けるための相続放棄には3ヶ月という厳しいタイムリミットが…。こういった事情から、負動産の可能性があるかどうかをできるだけ生前に査定しておくことが重要になるのです。

5.世間では「空き家活用」というテーマが話題だが…


地域活性や街づくり、地域包括ケアシステムといった文脈で「空き家活用」のテーマが世間的に広く語られることが多くなっています。医療や介護の世界では、地域の中に小規模拠点を多く配置するニーズは高まっています。「サ高住」と呼ばれる高齢者の住まい「サービス付き高齢者向け住宅」もこれからさらに増やしていく必要があるでしょう。「空き家活用」といった文脈にこういったニーズが適合するのか?聞いてみました。

「(そういった不動産ニーズを)空き家の活用と紐づけて考える必要はありません。大切な事は新築する場合と空き家を取得して改修した場合との採算性を比べてどうかと言う事です。空き家と言っても事業用不動産の一つと考える方が良いと思います」。

「空き家問題として世間で注目されている『その他空き家』に関していえば『活用する必要があるのか?』といった話なのです。建物の建築確認を所管している国土交通省の目線から言うと『その他空き家』は活用する必要がありません。例えば熊本地震で多くの家屋が倒壊しましたが、国土交通省が推奨する耐震性能を有する建物も倒壊し、専門家から対応は適切だったのかと非難を受けました。国土交通省からすると『その他空き家』は地震による倒壊や台風による飛散などのリスクそのものであり、『解体の補助金も出すから更地にして欲しい』と考えているのです」。

「サービス付き高齢者住宅について言えば介護保険を使うためには厚生労働省の示す要件を満たす必要があります。厚生労働省にとっては建物が要件に合致しているか否かが重要で、空き家を改修した施設であることを評価したりはしません」。

「実は空き家を活用してもらいたいのは自治体なのです。理由は人口を増やしたいという事と自治体で空き家を管理したくないという事です。空き家は自治体にとっても負担なのです。そもそも活用できない物件というのは、人が少なく事業が成立ち難いエリアにあるものです。それを無理に活用するとなると、それはもう事業の話じゃなくなってしまうのです。『活用しない方がいい物件というのがたくさんありますよ』という話です」。

「不動産は資産である」という常識は今や必ずしも常識ではないようです。
できるだけ早いうちに(できれば相続が発生する前に)、不動産査定をしておくことでその後の対策や段取りを的確に判断することができるようになります。人口減少社会は全国的にみれば不動産が余る時代でもあります。これまでの常識にとらわれず、相続するであろう不動産の実際の価値を適切に把握しておくことがその先で困らない第一歩になるということでした。

6.遺族の視点で考える空き家現象のまとめ

  • 葬儀の後の相続で喪家が空き家を抱えることになるケースは今後も増え続ける
  • 喪家にとって相続した空き家が「負動産」となる可能性が高まっている
  • 「空き家対策特別処置法」によって、空き家をそのままに放置することは不適切に
  • 生前整理はできるだけ行っておく(親族間で率直に話し合える関係も重要)
  • 不動産査定だけでも早めに行い、負動産であるかないかを含め市場価格を明確にしておく

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